華林苑 花日記
2026年02月07日(土) 華林のブログ能登半島地震のその後 -- 高貴な自然の地、珠洲(すず)、輪島(わじま)に寄せて
2024年の一月一日に起きた衝撃的な能登半島地震から二年余が経過しました。そして本格的な復興はまだまだ先が見えない状況のようです。
江戸時代には大地震を起こすのは大鯰(なまず)とされ、そして、鯰は「水の精」とされました。今日では大地震と地下の〝水〟との関係が取り沙汰されるようになりましたが、この不思議な一致は、昔から大地震の原因が「水」であると知られていたかのような印象を持ちます。
江戸の錦絵で興味ぶかいのは、大鯰が大地震をおこした後、人間の姿をして顔が鯰である「鯰男」がどこからともなく大勢あらわれて復興を手伝うというモチーフです。大災害を起こすのも復興を手伝うのも同じ「鯰」であるというストーリーは、思えばおそろしく哲学的なものです。
能登半島地震で被害がもっとも大きかった能登半島の先端、輪島市と珠洲市ですが、半島の先端部に近い外浦はその自然が高山のような高貴な表情をみせてとても好きな場所で、地震の前は年に2~3回は訪れていました。
そして昨年の十月の終わりごろ、地震後はじめてこの地を訪れました。ほぼ二年ぶりです。路線によってはまだまだ復旧していないところも多く、工事や迂回路でかなりはげしくジグザグに走行せざるをえないドライブとなりました。
能登半島の先端は禄剛崎(ろっこうさき)です。『狼煙(のろし)』の燈台の名前でも知られます。高い岬の下の海面には千畳敷と呼ばれる古い時代の地層がむきだしになっていて、美しくて風格のある場所です。ただ、ここは能登半島の〝先端〟で、最北端ではありません。最北の地はやや西寄りのシャク崎です。初夏にはセリ科のシャクが一面に白い花を咲かせることからきた名前と思われますが、じつは、明治時代の地図をみるとここの名前は「鹿島崎」となっています。
全国にある「カシマ」の地名は海岸沿いの地下水が豊富な深い緑の照葉の森であることが圧倒的に多く、「カシマ」はこのような場所をたたえる古い日本語の発音で、奈良時代のころに「鹿島」の字を当てはめたと考えられます。香島、鹿児島なども同系列の語でしょう。能登北端のシャク崎の一帯にも圧倒的といえる椿を中心とした照葉の森が高低をみせながら長い距離を広がっています。
能登の復興はまだまだです。注目されるのは、孤立しがちな半島部という条件の中で、たとえば小規模のインフラの研究がなされていることです。無理に長い距離を上水道をひかなくても井戸や湧き水を再活用したり、下水やトイレもバイオマスなどの技術で各戸で完結させてしまう、下水道の老朽化による深刻な事態が全国的に話題になっているなかで、ここ能登だけではなく新たな時代のモデルとなる可能性はありそうです。
電力などエネルギーも重要な課題となるでしょう。現在、大都市部に電力を送る大規模な発電所はこのような半島部に作られがちです。ここ珠洲でもかつて地元を激しく二分する原発計画がありましたが、なぜか立ち消えになってしまいました。できていれば福島の二の舞になった可能性も少なくありません。これは象徴的な話で、ここでも、小さな地域をカバーする小規模発電への志向がこれからは課題になるように思われます。
江戸の地震のあとで『鯰男』たちが多数あらわれて復興を手伝ったのと同じことが、今回は、これからの時代の新たなモデルをつくるという壮大なスケールで展開されるのかもしれません、とくにこの奥能登という美しい自然と共生するという大切なテーマのもとに。それは、大きな価値観の逆転という可能性も含んでいるように思われます。
明治二二年の能登半島の地図。半島先端部の珠洲市。右の→が禄剛崎、左の→がシャク崎(鹿島崎)=最北端。
地震後、昨年十月末ごろの禄剛崎。海と波がとても美しくみえる場所。数十メートルの眼下にみえる千畳敷とよばれる海面すれすれにあった地層がかなり上昇したように思われる。日本海側(西側)の外浦と呼ばれる地域では地震で大きく隆起した場所が多い。半島の逆側は陥没した場所もある。
シャク崎の近くの椿の森の神秘的な光景。十メートルをはるかに超える細くて高い椿の樹が林立し、神秘的な光景をみせる。下は岩場になっており、そこに根をはっている。(地震前の写真)
岬の近くでみつけた愛らしいノコンギク。(昨年十月末)
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