アジア古来の哲学と自然と芸術

彩流華 華林苑

Sairyuka art and old Asian philosophy rooted in nature.

華林のブログ


 

2023年12月17日(日) 華林のブログ

〝紅白〟の意味

――江戸・東京の霊的構造 その14
  武蔵の国のなかの〝ヤマト〟
 
  今回は趣をかえ、「紅白」などの意味について書きます。紅白などの哲学はアジアや日本古来のものといえ、〝ヤマト〟の文化を考えるうえでも重要なことです。さらには、七~八世紀あたりに古来の哲学にもとづいた規則が変えられてしまった例もあるようです。そこでは、さらに踏み込んで〝ヤマト〟の本来の意味やその後の紆余曲折を知る手がかりが見つけられそうです。
  「紅白」や「金銀」、「五色」などの色の哲学はアジア古来の陰陽の哲学にもとづいています。また、光の波長や混色など今日の科学で理解されている側面と古来の色の哲学は矛盾することがなく、古来の哲学はさらに説得力を持つようになっています。
  色は分かりやすい例ですが、色は五行や方角、季節や物事の性質などに対応しているので、色の哲学はたんに色だけでなくさまざまなことがらに応用してゆくことができます。たとえば「紅白」では「紅(赤)」は「天」を表し、「白」は「地」を表します。
  では、紅白を上下に配置するときは、天を意味する紅を上に、地を意味する白を下にするかといえば、実はこれを逆に配置するのが古来の作法です。たとえば神社の巫女さんの服装を思い浮かべていただければ、長い上着が白色、下に位置する袴が紅です。たとえば陰陽五行の哲学に長けていた加賀藩の史料をみると、お正月の鏡餅を上が白、下が紅という洒落た配置にしています。
  さて、なぜ紅=天を下に、白=地を上に配置するかといえば、赤=天は本来の位置にもどろうとして上昇し、白=地も本来の位置にもどろうとして下降します、これにより両者が交わる、交感するゆえに大いなる吉祥となるのです。
  同様に、「当たるも八卦当たらぬも八卦」などと揶揄される「易」の卦では、地を意味する卦が上に、天を意味する卦が下に配置されるとき(地天泰)これを最高の吉祥とします。紅白の配置と同じ理由からです。反対に、地を意味する卦が下に、天を意味する卦が上にきたときは(天地否)、もっとも悪い状態とします。つまり、天地が本来の位置に納まってしまっているので、両者が交感することがなくなるからです。また、納まって動かないことを忌み嫌います。水が淀んで汚れるのを嫌うのに似た感覚でしょう。生々流転、常に動いていることを貴ぶのです。
  天地は形にも対応します。天は円、地は方形です。天円地方の哲学と呼ばれます。地球が円いことは昔から知られており、天も地も円なのですが、地を方形(正方形)と考えるのは、南北の線を軸として地球が西から東の方向へと自転しているので、この自転の方向性を方形と表現するのです。「方」という字のいちばん古い意味は「方向」であり、そこから正方形、長方形などの「方形」という言葉が生まれたことを考えれば、その意味はよく分かるでしょう。いっぽうで、古来の哲学が数学、物理学的にもかなり正確で奥の深いものがあることに気づきます。
  「日の丸」の国旗は、この天円地方の哲学を形と色にそのまま取り込んでいることに気がつきます。これが偶然のことなのか、意図的に行われたことなのかは分かりません。形や色だけでなく、白の面積が紅の面積をはるかに上回っているのも古来の考え方に合致します。
  では、紅白を左右に配置するときはどうでしょうか?これをいちばん端的に示すのが熨斗紙です。向かって右から紅がきて、向かって左から白がきます。中央で両者が結ばれ、「結び」は紅白の交感で吉祥となります。
  紅白は陽と陰の性質ももちますから、右から陽、左から陰がきます。熨斗は中の品をぐるりと巻きますから、中の品の側からみれば、陽は左回転、陰は右回転となります。これは古来の「天左旋、地右動」の哲学とも合致します。「天左旋、地右動」は「陽は左回転、陰は右回転」と同じことなのです。
  男女もいうまでもなく陽と陰の性質となります。
  ひとつ、印象的なことがあります。着物の衿の合わせ方、いわゆる右前・左前の規則です。今日では男女ともに右前ということになっているようです。また亡くなった人の着物では左前にすることなども規則となっているようですが、じつはこの法則は七~八世紀ごろに、日本でそれ以前の規則を変えたもの、などと言われます。(この点についてはもう少し調べてみたいと思います)また今日でもアジアの他の国や地域では日本の規則と違う場合があるようです。この七~八世紀のころの日本は地名が変えられたり、さまざまな伝統・文化の変革が行われたりした時代のようで、日本の本来の伝統や『ヤマト』の意味を考えるとき、この七世紀の変革をどうとらえるかは非常に重要なことのように思われます。
  古来の哲学に沿えば、古くは、男は右前、女は左前であった可能性が高いと考えられます。また、この右・左という言葉は、床飾りや神仏の飾りなどにおいては「向かって」とは逆になるのが本義で、そんな点でも右前、左前という言葉は考えさせられるところが多いものと言えるでしょう。11月に華林苑で開催した「華林の芸術展」では拙作「縄文女神」「縄文男神」の絵にお花を門弟の方に生けていただきましたが、この絵ではほんらいの右前、左前と考えられる形で両神の着物を描いています。縄文晩期に尊崇された神をイメージしています。
  この絵は、1月に金沢エムザ(石川県)で開催される「北國花展」(1月20日~28日・24日は休)で若干の修正をくわえて展示、これに彩流華を生ける予定です。
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加賀藩の紅白のお鏡餅の飾りを再現したもの。金沢市、田井菅原神社。『彩流華』過去号より。
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易の卦「地天泰」。地を表す卦が上に、天を表す卦が下にある。非常によい相。
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易の卦「天地否」。天を表す卦が上に、地を表す卦が下にある。非常に悪い相。
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「熨斗紙」の紅白の配置。向かって右が紅、左が白。


 

2023年12月06日(水) 華林苑 花日記

華林の芸術展2023 無事終了しました。ありがとうございました。

11月22日~24日に華林苑=金沢市大工町で開催された同展は無事盛況のうちに終了しました。
厚く御礼申し上げます。
後日、作品集ならびにWEBでの全作のご紹介を予定しております。
写真は同展より。20231206214307-karinen.jpg
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2023年12月03日(日) 古流の花だより

12月1日田井神社でお朔日参りにお迎え花を献花しました。

森川理青社中
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2023年12月01日(金) 古流の花だより

11月5日に富山市高志会館で富山県支部の総会がありました。

家元先生による陰陽五行のご講義、彩流華の実演もありました。
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